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脚本家と密会

私の2019は一瞬でした。

大学生という子どもで大人な不思議な時間。

多感な時期であるこの瞬間に、『あなたと密会』を書けたことは一生の財産だと感じています。

脚本の設定が難航した時、「性を描く」という豪快なハンドルを切りました。

それまでは「二面性」を重視していた分、話の展開がダークに感じることが多々あり、

面白いと言える作品を産み出しにくい状況にありました。

にしても、「性」です。まあなんと書きにくい題材なんでしょうか。

人には見せない内なる部分を脚本にしろと。おいおい、性癖バレたらどうしてくれんだ。

正直そう思いました。

こう見えても自分は、春日部の大人気漫画を教育面上よろしくないと見せてくれない家庭に育ったのです。

そんな奴がエロいものを書けだなんて……まあ書いたんですけど。

もう調べれば調べるほど奥深いんですよエロって。

日本の性文化は一番多様性があるみたいです。言えばジャンルですね。

コアなところにまで対応していけるのが日本なんです。でも、ここにはきちんと循環された闇も見えてくるのです。

海外の風俗なんか見ても、ただただ性行為をするだけなんです。基本的にオプションが時間だったり会話だったり。

それに比べて日本は、お客様のニーズに応えられるのがすごいなあと感心するんですよ。

風俗やキャバもホストも、客となって金を払い楽しむのに、知り合いや、娘息子、幼馴染の友達がなると、まるで悪かのようにその職業に嫌悪感を抱くのです。

しかし、そこで満たされる人がいるからこそ、他にも誰が見て興奮するんだろうと思えるAVもあるからこそ、日本の治安は保たれているのかもしれません。

もしそれらがなかったら、この世はもっと性犯罪で溢れているのではないでしょうか。

性欲が満たされないゾンビみたいな人間が次々と通行人を襲うという一種のパニック映画になってもおかしくは無いかと考えます。

特に日本の性教育は知識として教えるんじゃなく、こっそり独学するものという認識にあります。

いけないことだとか、隠すものだと言われ続けるからです。押すな押すなで押すのがガキです。

スタートできちんと教えてくれない分、入門は人それぞれになってしまうのかなと。

あなたのエロはどこから?状態です。私はゴルゴ13と鬼平から。

昔ならではの漫画の女体のタッチがすごく美しいと感じました。

自分の学生時代はネットももう普及してましたし、女体で検索するとまあ、出るじゃないですかそういうサイト。

そこからですね。この世に性行為やAVがあったことは前々から知っていたんですが、それが子作りだと知ったのは高校三年生でした。

保健体育の勉強聞いてなかったんですね。

 

テーマが「性」になって不安だったのが、体験談がなかったことです。

ネットのもの、友人の話、漫画、ピンク映画、あらゆるところから勉強しました。

特に読んだのは漫画です。女性目線と男性目線で全く描写が違くて楽しかったです。

大学のオープンカフェで堂々と友達に借りたエロ漫画を読めるぐらいには成長しました。余裕です。

漫画の性描写は日本人が特に熱を入れているんじゃ無いかなとも思います。

春画もそうですが、江戸時代から女をタコで攻める触手ものがあるので。

漫画の性描写はなんと言いますか、一番想像力を高め易いのかなと感じました。

もちろん、じっくりは書いてあるんですが、コマとコマのその間を補っているのは我々の脳内であって、印刷されている十倍ぐらい楽しんで読んでるのかなと考えます。

そして性別という大きな題材にもきちんと目を向けないと、と思いました。

イザナギとイザナミがそうであったように、やはり男と女というめちゃめちゃ大きな所にも首を突っ込まざるをえない感じでした。

もうそろそろ性別という括りがなくなりそうですが、性に関する男女間の違いはまだまだ後五十年ぐらいは生きてると思っているので。

今回、組内の俳優に女性が多く主役も四分の三女性ということで、彼女たちを日頃から観察し、どういった女なのかを個人的に分析していました。そうして日のあるうちにみんなと会って会議をし、帰ってその子らの「性」にまつわるシーンを書く、という日常を送ってまして。

翌日、なんだかその子の顔が見れなかったりもして、ああ、女友達で抜いた男はこんな気分なのかと、一生味わなかったかもしれない体験もしました。

最終的には四話分同時に進行しましたから、半分ギャルゲーの主人公の気持ちでした。

あの女を口説くには、どうやって落とすか、どうやったらベッドインまで持っていけるか。

今考えてもとっても失礼だし、友人じゃなかったら逮捕案件です。

大学生みたいな内容の会話の延長で、その子からたまに出る色気を、ずっと球拾いのごとく待ってるイメージです。

ボールが落ちたなら、犬のように逃さず取りに行きました。

今回、広報でも「偏愛」のふた文字を多く使われましたが、作者的には偏っているか?って感じです。

どんなに歪んだ関係でも、必然性やそれにたどり着く理由が美しかったら、私の中でそれは純愛ドラマなんです。

ドラマとは、出てくる人物の成長と言いますが、きれい事だけが成長だとは思っていないので。

クズに成長もできるし、クソ野郎にもビッチにもなれるんです。

否定的な成長は「おちる」と表現されがちですが、そんなことはありません。

それらも素敵で立派な理由があれば美しいドラマなんです。倫理や禁忌にも通用するかと思います。

『あなたと密会』での登場人物の行動や結末も、脚本という文字だけで見るととんでもない奴らですが、奴らなりの美学は持たせてているんです。

自分の美学の反することはしていないので、最終地点がこれでも全員成長はしてくれました。

そんでもって書いてて楽しいと辛いが共存した理由が「あてがき」だったことを挙げます。

基本、自分の中で多重人格としてキャラクターを産み、脳内で会話をさせてセリフに落とすのですが、

今回は俳優を見て、こう言いそうと推測しなければなりませんでした。

私の中の面白いを俳優がやったらつまらない。

逆も然り、しかし、そこがドンピシャにはまった瞬間の快感は他のものに変えられないですし、

一人で脚本を書くだけだと絶対に得られない感動でした。

 

この一年間は、エロいこと考えていたら終わっていました。

「性」に犯されるこんな濃すぎた一年は、これまでもこれからも、もう迎えられないんじゃないでしょうか。

大学生の好奇心と行動力、想像力は恐ろしいものです。

そして、ある程度の自由は意欲につながります。ある程度です。

制限がないと締め切りは守れません。まあ、あんまり守ってこれませんでしたが。

知識への欲求、題材含め、人として、文章を書く人間として、とても大切で面白かった環境であったと思います。

このゼミでは沢山のことを学べました。

いらなかった知識も膨大に身につきましたが自分にない知識を得る時に、

理解はできなくても認識という点で今までの倍ぐらい、勉強をしたと言っていいと思います。

ムッツリすけべからオープンすけべに成長したことは悔やみますが。

プロデューサーのオファーに返事をしてよかったなと心の底から思います。

脚本家 上田 美穂 

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